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「ぼくはせかいでいちばんあのこがだいすきだ」
   
8歳にもなるとスケッチ大会も手馴れたものだ。
先生は自由な場所で書いていいよと言うけれど男子は男子、女子は女子どうしで固まって書く。一緒にいるとエロって言われるからだ。
   
ぼくは、あまりそういうことを気にしない。堂々としてればいいと、お父さんに教えてもらっている。
だから堂々と、ミカちゃんがいるところがよく見える芝生に座って、5メートル先にいるミカちゃんを描いていた。
みんなは水族館の建物だったり、海の向こうに見える山を描いたりしている。
だけどぼくは別に建物を書きたいわけじゃ無いし、田舎に住んでるから、山なんていつも見てる。
ミカちゃんのことも、いっつも見ているけど、絵に描いたことは一度も無かったから今日はいい機会だ。
ぼくは最近ミカちゃんに凄く興味がある。
ミカちゃんは、なんだか他の女子より髪の毛の一本一本が細くてサラサラしてるし、前田さんみたいに男子に怒ったりしない。
持ってる消しゴムもイチゴの匂いがするやつで、肌の色もぼくと少し違って色が薄い。
ずっと見ていて、色んな事に気がついたけど全然飽きない。もっと知りたいのだ。
   
初めてだからよく分からないけど、ぼくはミカちゃんが大すきになってしまった。
   
前からこんなにミカちゃんが大すきだったわけじゃ無い。
二ヶ月前の国語の授業で、悲しいキツネの話を読んだミカちゃんは泣いちゃって少し気分が悪いって先生に言った
保険係のぼくがミカちゃんを保健室に連れて行って、ベッドにミカちゃんが横になったんだけど、その時少しスカートがめくれてパンツが見えていた。
お母さんから女の人のパンツは見たらいけないと教えられていたのに、ぼくは体が動かなくなって、ずっと見ていた。
保健室の先生が「はやく授業に戻りなさい」とぼくに言ったから、まだ見ていたかったけど保健室から追い出された。
   
教室に帰る時にぼくは今見た光景をずっと思い返していた。そして同時にわかった。ミカちゃんが大すきだってことが。
   
   
   
そして今日はミカちゃんを描こうと決めていた。
ミカちゃんの耳の形、口の形、なかなか上手く描けない。
だから足の方から描こうと思って、描き始めるとスラスラ描けた。
ふとももを書き終わると、スカートを描かないといけない。
   
ぼくはふと気がついた。
ぼくが絵にスカートを描かないで、足を描き続けたら、裸のミカちゃんが出来上がるじゃないか。
衝撃だった。
ぼくはもう描かずにはいられなくて、目を細めたり、思いっきり広げたりして、ミカちゃんの足の形を想像した。
(違う、ここから先はお尻だからもっとまるくて・・)
   
ずいぶん集中していたものだから後ろから日「きゃあ!」と前田さんの悲鳴が聞こえるまで、ぼくは前田さんの気配に気がつかなかった。
そこから先はあまり覚えていない。
先生がたくさん集まってきて、いろんなことをきかれたけど、ぼくは答えなかった。
そのまま学校に連れて行かれて、お母さんが迎えに来てくれた。
先生とお母さんが2人で話をしていたけれど、ぼくはやっぱりミカちゃんのことばかり考えていた。
   
しばらく学校を休んで良いってお母さんに言われた。NHK見放題なのに、なんだか全然つまらなくて、眠くないのに目を瞑ってミカちゃんのことだけ思い出してた。
一週間位休んだ頃、仕事から帰ってきたお父さんに、ぼくが転校することを聞かされた。お父さんはぼくを怒らなかったけど真面目な顔でぼくに質問をした。
「いま何を考えている?」
ぼくは答える
「ぼくはせかいでいちばんあのこがだいすきだ」
お父さんは、うんうんと頷いていた。
お父さんは世界にはルールがあることや、世界はまだまだ広いって話をしてくれたけど、あんまり意味が分からなかった。
   
なんでミカちゃんを大すきなのか聞かれたから、髪がサラサラな事、イチゴの匂いの消しゴムのこと、そしてお父さんには正直にパンツの話もした。
   
お父さんはその話を聞いて、なるほどって顔をして、どこかに電話をしていた。
20分もしないうちに、ナツキおばさんが来た。
ナツキおばさんはお父さんともお母さんとも友達で、おばさんって呼んでるけど凄く綺麗なおばさんだから、あんまりおばさんじゃない。
   
ナツキおばさんはぼくの手を握って自分のおっぱいに乗せた。そしてそのまま手をムニュウっとおっぱいに埋めた。
ナツキおばさんのおっぱいはお母さんの3倍くらいある。
ナツキおばさんはニッコリしてぼくを見たあとサッサと帰ってしまった。
   
そのあとお父さんに「今いちばん誰が好き?」って聞かれた。
ぼくは一生懸命ミカちゃんのことを思い出そうとしたけれど、ミカちゃんの顔や仕草の思い出はムニュウっとナツキおばさんのおっぱいの中に消えていった。
   
ぼくが「わからん」と言うと、お父さんは嬉しそうにビールを飲み始めて最後に言った。
   
「世界は広い、ルールは守れ。だけど色々しょうがないことも、あるもんな」
    
それでこの話は終わった。
ぼくは今から高学年になるし、その後は中学生にだってなる。
そしたら世界のたくさんの女子が見れるから、お父さんに何を聞かれても、ナツキおばさんのおっぱいを触っても、堂々と言えるようになるんだ。
   
「ぼくはせかいでいちばんあのこがだいすきだ」